赤坂-SCHAUPP 知英さん/ヴァイオリン/リンツ・ブルックナー管弦楽団首席/オーストリア・リンツ

赤坂-SCHAUPP 知英さん プロフィール

「音楽家に聴く」というコーナーは、普段舞台の上で音楽を奏でているプロの皆さんに舞台を下りて言葉で語ってもらうコーナーです。今回オーストリア・リンツ・ブルックナー管弦楽団でご活躍中の赤坂-SCHAUPP 知英(アカサカ-シャウプチエ)さんをゲストにインタビューさせていただきます。「音楽留学」をテーマにお話しを伺ってみたいと思います。
(インタビュー:2009年12月)


ー赤坂-SCHAUPP 知英さんプロフィールー

赤坂-SCHAUPP 知英さん
赤坂-SCHAUPP 知英さん

4歳よりヴァイオリンを始める。桐朋学園大学音楽学部卒業、併せて卒業演奏会出演。ドイツ国立デトモルト音楽大学を最高点(1,0)で卒業。卒業と同時にリンツ・ブルックナー管弦楽団第二ヴァイオリンに合格、入団。翌年には、ウィーン国立音楽大学postgradualに入学、最優 秀”Sehr gut”で終了した。同年リンツ・ブルックナー管弦楽団第一ヴァイオリンに合格。さらに08年からは同楽団第一ヴァイオリン首席奏者に就任。これまでにヴァイオリンを山岡みどり、篠崎功子、トーマス・クリスチャン、ゲーザ・ハルギタイ、クラウス・メッツェル他に、室内楽をヨハネス・マイスル、 アルテミスQ、バルトークQ他に師事。近年は新鋭ヴァイオリニストとして抜擢され、自身のオーケストラと共演したり、同オーケストラ団員を含めた弦楽四重奏団を結成。ウィーン、リンツを中心に 演奏活動、企画にも積極的に取り組んでいる。


-まずは、簡単なご経歴を教えてください。

赤坂  4歳でバイオリンを始めました。桐朋学園大学音楽学部を卒業しまして、ドイツの国立デトモルト音楽大学でディプロマを取得しました。卒業と同時にリンツ・ブルックナー管弦楽団、第二ヴァイオリンに合格し入団しまして、 翌年には、ウィーン国立音楽大学に入学し1年在籍しました。同じ年に、リンツ・ブルックナー管弦楽団第一ヴァイオリンに合格。さらに08年からは同楽団の第一ヴァイオリン首席奏者に就任して今に至っています。

-バイオリンを始めたきっかけは?

赤坂  兄がバイオリンをやっていまして、当時、兄のレッスンに連れて行かれていたんですが、そこで見たレッスンの様子が、とても楽しそうだったんです。そして、「あれをやってみたい!」と、母に言ったのですが、本気にされず、無視されてまして(笑)。翌週、先生にやらせてほしいと直談判しました(笑)。

-積極的というか、行動派だったんですね(笑)。

赤坂  そうなんです。

-お兄さんがバイオリンを習っていたのは、ご両親からの影響だったんですか?

赤坂  いえ、全然。母が小さい頃、バイオリンに憧れていたらしく、子どもがやってくれればいいな、という程度だったようです。でも、兄は男の子なので、すぐに別のことに興味が移って辞めてしまったんですけど。

-赤坂さんは、クラシックに興味があったんですか?

赤坂  当時は、音楽の入り口がクラシックだったので「音楽=クラシック」という感じでした。大きくなってからは、ポップスやジャズも聴いたりしましたけど、基本はクラシックでしたね。

-4歳で始められてから、プライベートレッスンでバイオリンを習い続けたんですか?

赤坂  そうですね、4歳から中学生くらいまで、定期的にレッスンを受けてました。でも、両親が、音楽の道に進むことを反対していまして。音楽の道でやっていくのは、かなり苦労するだろうと。それで、音楽高校はあきらめて、普通高校に行きました。その受験勉強があったので、レッスンは一時お休みしました。

-赤坂さんご自身は、いつから音楽の道に進みたいと思い始めたんですか?

赤坂  実際、普通高校に行ったんですが、やはり大学は音楽をやりたいと両親を説得して、桐朋に入ったんです。でも、桐朋って、小さい頃から専門的な音楽の勉強をしている方がたくさんいますから、カルチャーショックを受けて、自信を失ってしまったんですね。これでは、プロでやっていくなんて、到底無理だと思ってしまったんです。なので、実際にプロでやっていこうと思ったのは、留学を決めたあたりですかね。

Image-留学を考え始めたのは、いつくらいですか?

赤坂  大学在学中、仲間と室内楽を組んでいまして、ドイツでマスタークラスを受ける機会があったんです。そこで、自分は井の中の蛙だったんだと、ショックを受けまして、海外で勉強をしたいと考えるようになりました。その時、デトモルトとウィーンで教えられている先生と出会って、僕のところで勉強してみたらどうかとおっしゃっていただいたんです。ウィーンかデトモルトで教えていただくことになるわけですが、当時デトモルトってどこ?って感じだったので(笑)、ウィーンでお願いしますって言ったら、「ウィーンには日本人が多いから、キミのような人は日本人の少ない環境で、集中して勉強したほうがいいのではないか」と言われたんです。結果的にはそれが当たりで、ありがたかったですけど。

-ちなみに桐朋に入学された時の挫折感から、どう立ち直って、留学を決意するに至ったんですか?

赤坂  やっぱり、ひとつ大きな自信になったのは、卒業演奏会に選ばれたことですね。バイオリン科約30名の中から3人選抜されるんですが、それに入ったんです。当時コンクールなどは受けたことがほとんどなかったので、自分がどの程度の実力なのか分かっていなかったんですよね。

-それまでは、「自分なんてプロは無理」って思っていたんですか?

赤坂  夢物語でしたね。プロになれたらいいなというのは。自信がなかったんですよ。NHK交響楽団のエキストラとして演奏させていただいた経験があったんですけど、相当レベルの高い楽団ですし、自分がこういう中で、ずっとやっていけるなんて考えられなかったんです。なので、海外に出て世界を広げてみようと行ってみたら、海外の方が肌に合っちゃったんです。2年半では帰りたくない、こっちで働きたいって思うようになっちゃったんですね。

-日本と比べてどこが合っていたのでしょうか。

赤坂  東京の近くで生まれ育ったせいもあると思うんですが、ヨーロッパ全体として、時間の流れがすごくゆっくりですよね。それと、普通に生活している中で、ごく自然に音楽が身近にあるという空気がとても合っていました。

-デトモルトのような小さい街でも、やはり音楽にあふれているのですか?

赤坂  デトモルトは音楽大学でもっているような街だったので、学生も多かったですし、音楽会もありました。ただ、有名なオーケストラは来ないので、演奏会などは、近くの大きな街に行くという感じでしたね。
 

リンツ・ブルックナー管弦楽団
リンツ・ブルックナー管弦楽団

-音楽をする上での違いはありましたか?

赤坂  日本では全く接することがなかった、いろんな国から来た音楽家の方々との出会いが、とても刺激になりましたね。

-渡航されてすぐの時、戸惑いはありましたか?

赤坂  ありましたよ、最初は。お友達もいないし、食べ物も違いましたし、ホームシックになって、日本に帰りたい!って思っていました。

-語学の面では、いかがだったんですか?

赤坂  私は、日本で2ヶ月くらいしか勉強して行かなかったので、すごく大変でした。これから行かれる方は、語学は勉強してから行ったた方がいいと思いますよ。

-デトモルトは、入学の時、語学の証明書は必要なかったんですか?

赤坂  私が入学した頃はありませんでした。今はあるみたいですけど。

-2年半で卒業されて、リンツに移動されたんですよね。 ブルックナー管弦楽団に入団されようと思ったきっかけは?

赤坂  留学して1年半くらい経った頃、こっちでチャレンジしてみたいと考え始めるようになり、先生に相談したんです。先生は、「ぜひ挑戦しなさい。いったん帰ってからだと、戻ってくるきっかけを失ってしまうよ。」と背中を押してくださいました。専門雑誌に、オーケストラの募集広告が出ているので、それを見てセカンドバイオリンの募集に応募してみたんです。でも、ヨーロッパでは、オーディションを受けるのに招待状を受け取らないといけないんですね、それがなかなかもらえなかったんです。
(編集注:ヨーロッパの中で、国により、招待状が不要な国もあります。)
 

ゲネプロ中の赤坂さん
ゲネプロ中の赤坂さん

-オーディションを受けるのに招待状が必要なんですね。

赤坂  はい。現地のオーケストラで活動した経験という基準がないとだめなんですよね。なので、プロではないのですが、ユースオーケストラがあったので、まずそこを受けてみたんです。大きな基準になりますから。幸い、約100人中10人の合格者に入って、ドイツ国内外での演奏の機会が与えられました。そういう経験をしていくうちに、少しずつ招待状が来るようになったんです。でも、その招待状も、エキストラや研修性のオーディションだけでした。私は、絶対にヨーロッパでやって行きたいと思っていたので、先生に相談し、国は変わりますが、先生の出身地である、リンツのオーケストラの正団員募集の空きを見つけて応募したんです。

-ドイツとオーストリアの違いはありましたか?

赤坂  入団オーディションで言うと、オーケストラスタディの課題曲が違います。もちろん、オーケストラによって少しずつ違いますが、ドイツの場合は、ファーストでもセカンドでも大抵の場合ファーストのオーケストラスタディが出るんです。オーストリアは、セカンドならセカンドのスタディが出るんです。なので、急いでそれを勉強し直しました。それから国の違い、ということではありませんが、ブルックナーオケは大抵課題とされるロマン派の協奏曲でなく、バッハのソロソナタが課題だったので、バッハも急いで勉強し直しました。

-オーディションの様子はいかがでしたか?

赤坂  1次予選がカーテン審査でした。45人いて、1次予選を通ったのが8人でした。2次通過が4人で、そのまま4人で4次審査まで続きました。

-最終的には、赤坂さん1人合格だったんですか?

赤坂  そうです。

Image-受験者は、現地の方が多かったですか?

赤坂  私が受けた時は、日本人も何人かいました。オーストリアで勉強されている方達でしたね。あとは、やはりドイツの方も多かったですね。全体的にはヨーロッパ人が多かったです。

-45人中1人選ばれたわけですが、合格の秘訣みたいなものはありましたか?

赤坂  ひとつは、無欲だったということですかね。絶対受かるわけないと思ってなかったというか、力試しって思っていたので、上手く力が抜けてたんでしょうね。緊張はしてましたけど、挑戦でしたからね。私のモーツァルトは、どういう風に評価されるのかなっていう程度で。

-変に力が入ってなかったんでしょうね。他には?

赤坂  やっぱり、無欲だったと言う中で、音楽がとても楽しめたんです。全部で3回オーディションを受けたんですけど、初めのオーディションが一番楽しかったですね。

-面接はなかったんですか?

赤坂  4次予選が終わってからありました。一人ずつ呼ばれて、いつくらいから仕事できますか?という程度のものでしたけど。

-結果を聞かれた時どう思いましたか?

赤坂  やっぱり嬉しかったですね。これでヨーロッパで、プロとして仕事していけるんだ!っていう喜びは大きかったです。

-第二バイオリンにも試用期間はあったんですか?

赤坂  はい、半年から1年ありました。

-実際に入ってみて、改めて発見したことはありましたか?

赤坂  最初は、外国人として西洋音楽を演奏していくことにコンプレックスを持っていたんです。でも、皆さんの日本人に対するイメージや、接し方が良い意味で違ってたんです。東洋人だからというマイナスイメージではなくて、むしろ、「日本人は的確に仕事をする」というように、評価が高かったんです。

-日本人だから不利と言うことはなかったんですか?

赤坂  今だったら全くないですね。もちろん、ウィーンフィルなどは、オーストリアの伝統を守るために、オーストリア人の男性、もしくはオーストリアの音楽教育を受けた者でなくてはいけないとかありますけど。他は一次予選はカーテンが多いですし、実力主義ですね。日本人だからといって不利になることはないです。むしろ、同じ点数なら、日本人は的確に仕事をする、というプラスの評価をもらえることも意外と多いのではないでしょうか。

Image-オーケストラでやって行くときに重要なことは何でしょうか。

赤坂  首席奏者になって勉強したことですが、あえて我が道を行くべきですね。日本人って、どうしても周りを気にしがちですが、それをしているとダメになってしまうので。良い意味でマイペースに、自分がやることをやる、自分の音楽を確立することが重要だと思います。

-首席となられた今と、第二バイオリンをやっていたときとの違いはありますか。

赤坂  まずは、コンサートマスターに代わって、皆を引っ張っていかなきゃいけない責任ですね。また、団員に代わって、指揮者に意見しなきゃいけない場面もありますので、語学がより重要になってきましたね。あと細かいことで言うと、大きめに動いて引っ張っていかなきゃいけないとか、準備なくして仕事に行けなくなったことなど、いろいろありますね。

-ご自身の音楽に対する意識は変わりましたか?

赤坂  以前より、もっと世界を広げたいと思うようになりました。日本人としてオーストリアで働いていますから、日本とオーストリアをつなぐような演奏をしたいと思うようになりました。以前は全く思いませんでしたけど。

-話は戻りますが、第二バイオリンをしていたときにウィーン国立音大に入られたんですね。

赤坂  はい。普通科ではなく、仕事をしながら通えるコースですけど。それまでドイツで勉強してましたから、ウィーンの空気も勉強したいと思いまして、1年間通いました。

-どのくらいの割合で通っていたんですか?

赤坂  レッスンだけなんですけど、仕事の関係で1ヶ月全く行けないときもありました。そういう時は、翌月に1週間ごとに通ったり。そのへんは臨機応変でした。先生も理解がありましたし。

-ウィーンとドイツの違いはありましたか?

赤坂  音楽の違いとはあまりないですけど、国民性がだいぶ違いますね。ドイツ人の方が日本人に近い感覚で、生真面目というかピリッとしているという感じです。オーストリア人の方が和やかで穏やかな感じですね。

-どっちが合っていますか?

赤坂  私はオーストリア人のほうが合っていますね。
 

リンツ
リンツ

-リンツの街の様子はどんな感じなんですか?

赤坂  2009年に芸術文化都市に選ばれて、芸術面で活気がありますね。街自体はこじんまりとしています。空気の流れがゆっくりで、とてもいい環境ですよ。

-リンツには音大がありますよね。レベルは高いんですか?

赤坂  以前に、ここに通われている方のレッスンさせていただいたことがありましたけど、ウィーンと比べて、絶対的に生徒数が少ないですから、そういう意味で、切磋琢磨している感じはなかったですかね。

-赤坂さんは、このまま首席バイオリニストとして、活動を続けていかれるのですか?

赤坂  そうですね。おこがましいようですけども、コンサートマスターの席に空きが出たら、モチベーションがあるうちに挑戦してみたいと思います。

-オーケストラの団員としてのやりがいは何ですか?

赤坂  一人で演奏するのとは違って、「みんなでひとつのものを作り上げていく」という感覚が喜びですね。同じ目標に向かっていく感覚というか。

-難しい質問かもしれませんが、赤坂さんにとって音楽とはどんな存在ですか?

赤坂  私にとっては、心に感ずるままに表現できる、魂の叫びみたいなものです。そして、もう一方では、お薬のようなものですね。精神的につらい時も、音楽があったから立ち直ってこれたし、喜びなどを表現できる道具でもあるので。生きてきた半分が音楽ですから、私から音楽を取ったら何もなくなりますね。

Image-赤坂さんのように、将来、海外で活動したいと思っている方に、プロとして活躍する条件や秘訣を教えてください。

赤坂  秘訣は、あったら教えてほしいくらいなんですけど・・・(笑)。あきらめない気持ちでしょうかね。絶対に夢は叶うんだ!って、強く思い続けている人が成功すると思います。あと、オーディションで審査させていただく立場からすると、音楽って繊細な感性が必要ですが、もう一方で、絶対的に強い神経を持っている人でないといけないんです。家で練習して上手にできても、オーディションでも演奏会でも弾けなかったら、プロとしては残念ながら難しいですね。なので、図太い神経が必要なんです。そうでないと、外国でやっていく上で病んでしまいますからね(笑)

-持って生まれたものでしょうか。

赤坂  それも、もちろんありますし、周りを気にせず、意識して我が道を行くということで養われることもあると思います。

-海外で勉強したいと考えている人にアドバイスをお願いします。

赤坂  目標は漠然としたものではなく、明確な目標を持つことが必要です。近い目標と遠い目標を両方持ちましょう。あと、海外に行くのは語学が大事ですよね。英語が出来ることも有利ですが、音楽の世界の共通語としてはドイツ語。英語以外にも勉強していると楽しくなると思いますよ。

Image-赤坂さんは2ヶ月の勉強だけで渡航されたそうですが、渡航後、どうやって語学を身につけたんですか?

赤坂  てっとり早くお友だちを作ることですね。語学学校にも通いましたけど、それより、おしゃべりしていく中で覚えることが多いですからね。

-そういう交友関係の中から、すぐに上達しましたか?

赤坂  普通に生活する上では徐々に楽になりましたけど、結局は、仕事を始めてからだいぶ上達したのではないでしょうか。まだまだですけどね・・・(笑)

-首席で意見を述べるときに語学力は絶対必要ですもんね。

赤坂  きちんとした言語を話さないと、馬鹿にされますからね。あとは、外国人としてやって行く中では、ある程度、力を抜いてやっていくことが大事というか、切り替えが大事ですよね。私も、最初それがすごく苦手で、失敗すると引きずりましたし。ただそれをやっていると、病んでしまうんですよ。あとは、たまに日本に帰ってきて、家族と過ごすことなども、エネルギーの補給として必要でしたね。

-赤坂さんの今後の目標を教えてください。

赤坂  日本人としてオーストリアでやっていく上で、ウィーンワルツですとか、日本の方にもっと聴いてもらえたらいいなと思っているんです。企画・構成・演奏に携わって、日本とオーストリアの両方でやっていけたらいいなと思っています。

-来日コンサートの予定などはありますか?

赤坂  オーケストラで日本のツアーは、2~3年後にありますけど、個人としてはまだ全然実現できてないですね。

-今後のご活躍をお祈りしています。今日は、音楽を志す学生さんにとって、素晴らしいお話をたくさん聴かせていただきました。本当にありがとうございました!
 

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